2023 02 15

特別なことは一切なし!日本のあの食材でヘルシーに!京つけものもり

代表取締役

森 義治氏インタビュー


 京漬物を販売する株式会社もりは、「ぬか漬け」に焦点を当て、機能性表示食品制度を活用した。背景には、日本人の誰もが知る漬物の魅力を引き出し、伝統的な食文化の定着に賭ける思いがある。

 日本人誰もが馴染みのある漬物だが、近年、パン食の増加を受けたコメの消費量の減少とともにその消費量は落ちている。「昔は食卓に並ぶおかずの真ん中に漬物がありましたが、女性の社会進出で家庭で漬ける習慣が減り、親御さんが出さなくなってきたことも影響している」と、二代目社長である森義治氏は話す。

 健康意識の変化も消費量の減少に影響している。保存食である漬物は塩分の使用が不可欠であるため、高塩分食品として敬遠される傾向もあった。もりでは、変化する消費者の意識を捉え、本来、健康や美容によい影響のある漬物について、さまざまなアプローチを行うことでその魅力を知る機会を提供している。合成保存料など添加物を使用しない減塩漬物の開発では、漬物として初めて国立循環器病研究センターの定める減塩基準に沿った「かるしお認定制度」の認定を受けた。人工の甘味料や着色料を使用しない工夫も行っている。

 取り組みの背景には、漬物づくりに賭けるモットーがある。「先代がよく言っていたのは、〝自分の子供に食べさせたい漬物を作ろう〟ということ。それがすべての基本だと。一番大事な子供、食べてくれるお客様のことを考えたら滅多なものは作れない、とよく言われました」という。そうした取り組みの一つとしてチャレンジしたのが機能性表示食品制度の活用だ。もりでは伝統的なぬか漬けに焦点を当て、その有用性を検証する中で、ぬか漬けにアミノ酸の一種であるGABAが豊富に含まれ、発酵に応じてその量が増加していることを科学的に確認した。商品開発や設備投資を支援する京都府の「ものづくり補助金」を活用して届出を行い、19年、「森の恵み」シリーズ5品目(大根、胡瓜、人参、茄子、南瓜)が機能性表示食品として受理された。機能性関与成分としてGABAを含み、「血圧が高めの方に適した機能があることが報告されています」といった機能を表示している。

 ただ、商品は、「特別なことは何もしてない」という。「この商品が特別なもので、これをどんどん買ってほしいということではなく、昔から食卓で親しまれてきたぬか漬けにはすべてGABAが含まれ、健康によい影響があるということを知ってもらいたい」と、制度活用の狙いを話す。

 制度の活用以外にも、オリーブや豆腐といった新たな食材を使った漬物の開発で、その魅力を知ってもらう機会の創出を図っている。一方で、伝統的な漬物の開発にも取り組んでいる。力を入れているのが、京都・亀岡に持つ自社農場で栽培する青味大根の漬物だ。青味大根は江戸時代後期に京都で栽培され、すでに絶滅した郡(こおり)大根の変種。収穫量も少なく、希少価値の高い伝統京野菜だ。細身で青味が濃く、バリバリとした食感は、サクサクとした一般的な大根に比べ生食には適さないが、漬物にすることでその食感が生きるという。京漬物というとすぐき、千枚漬け、柴漬けが有名だが、「京都の名産として根づかせていきたい」と、90年代に商品化。毎年10月から1月頃だけ店頭に並ぶが、徐々に売り上げが拡大し、〝まだ出ませんか〟と問合せをもらうほどの商品に成長したという。「例えば、野菜嫌いの子供が漬物であれば食べることができ、自分の母親が作ってくれた、出してくれた漬物がおいしかったとなれば、きっとその子供も自分が親になったとき、子供に同じようにするのではないかと思います。そうして食卓で漬物に親しむ習慣が増えればよい循環になります」。もりでは、漬物を通じた食育、食文化への定着に努めることで、和食全体の価値を高めていきたいと考えている。


京都の漬物 京つけもの もり

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