2024 04 04

「紅麹」サプリメント問題から考える


「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、同社は「紅麹コレステヘルプ」「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」「ナイシヘルプ+コレステロール」の、いずれもコレステロールや血圧を下げる効果を記した健康食品を自主回収する事態となっています。また、卸先に販売していた同ロットの紅麹も自主回収、さらに、同紅麹を使用した商品を製造していた各企業もそれぞれが自主回収を呼び掛ける事態にまで及んでいます。

4月4日現在では、ある特定のロットの商品に青カビから発生することがある「プベルル酸」という物質が混入しており、健康被害の原因になっていると報告されています。

当委員会の委員であり食の効能普及全国会議 会長の中嶋先生にお話を伺いました。

以下先生より。


「小林製薬の対応が問題になってますが、製薬企業としての危機管理が問題です。一般的な食品製造の安全管理に関しては、製造の衛生管理マニュアル(HACCP,GMP等)が製造工場のラインごとに作成されており、そのマニュアルの通りに衛生管理がなされています。


なかでも製造ロットの概念を重視しており、原料、製造工程、製造日時が同一のものでロットを構成し、このロットごとに予め定められた規格や安全基準に適合するか否かの検査分析を行い、検査結果で合格したロットの製品のみを出荷するのが常識になっています。


このロットごとの検査が安全が担保されているかどうかの最後の砦です。


さらに、ロットごとに検品用サンプルを長期間保存することにしており、もしもの事故やクレームが発生した場合に、迅速に対応し原因究明を行うことを可能としています。


今回の事態は、この最後の砦が機能しなかったことを意味していますので、ロットごとの検査分析記録を調べることで安全管理が実行されていたかどうかが分かります。


仮に、検査分析が実施されていたとすれば、マニュアルの規格や基準の設定が甘かった可能性が考えられます。いずれにしろ、食品による健康被害を生じた重大な食品衛生法違反事件になります。」


今回の問題は、紅麹そのものが、あるいは機能性成分の「米紅麹ポリケチド」が原因ではなく、発表にもあるように「プベルル酸」が直接の要因のようです。製造管理、衛生管理の不備によるトラブルと想定されます。もしくは、フードディフェンス※の問題も否定できないでしょう。


いずれにせよ、今回の健康被害報道によって、「サプリメントはあぶない」「機能性表示食品も信用できない」などといった風潮が、利用者に蔓延することを危惧します。


その一方で、「サプリメントは健康に良いものだ」「製薬会社の商品だから安全だ」といった認識も決して正しいものではない、ということを改めて考えさせられます。とくにサプリメントは、一般食品のように五感で判断できるものではなく、利用者が安全性のチェックをしにくいものです。そのため企業側が適正な危機管理をしていくことが最も重要なことではありますが、わたしたちもこのことをよく認識し、サプリメントを利用するときには、常に自身の体調をチェックすることを怠らないでいることも大切だと思います。



※フードディフェンス…第三者が悪意により食品に異物を混入させる「事件」を防ぐための対策。これは、人為的ミスなどの偶発的な「事故」ではなく、わざと異物の混入を図る「食品テロ」を防ぐことを目的としています。